【2022業界展望 軟包装編】
取り組むべき最優先課題は
2022年の軟包装業界を展望すると、21年に引き続き取り扱う製品群によって”明暗”が色濃く出そうだ。
新型コロナウイルス感染症拡大の収束も見通せない中でも環境対応、価格交渉、人材育成・確保、新商品・機能性・付加価値製品の開発、設備体制の刷新など取り組むべき課題は山積だ。
不透明感の濃い市場環境で各社がどこを最優先として取り組むのか、また注力すべき焦点はどこになるか非常に注目が高まる一年になりそうだ。
安定した需要の食品市場
軟包装業界に携わる企業の多くは食品市場に属している事情から安定した需要を獲得している。
2021年1~9月の緊急事態宣言により20年に引き続き、巣ごもり需要により中食・内食関連の製品群は堅調に推移した。
一方で業務関連、外食関連、観光・土産関連製品などの需要は厳しいものとなった。
宣言解除後には人流が戻り、10月以降の荷動きに期待し始めた直後に新型コロナの変異ウイルスであるオミクロン株により、状況は一変した。
揺るがない軟包装資材の有用性
軟包装業界を含むプラスチック業界では、プラ製ストローがウミガメに刺さった映像が世界中に駆け巡り、海洋プラスチックごみが世界的な問題となったことから突然として一般消費者などからは”プラスチック=悪”といった印象が先行してしまった。
現在も一部、紙包材への切り替えが進んでいる中でも軟包装資材の有用性は揺るがない。
軟包装材は、食品の安全性やフードロス低減にも貢献するだけでなく、日用品など幅広い用途でも使用され、流通を支えている。
軟包装資材が果たす役割、社会インフラとして日々の生活に寄り添っているかを改めて啓もうしていく必要がある。
軟包装資材ではないが、コロナにより医療現場ではフィルム製の防護服や手袋は多くを必要とされるなどは見逃せない。
環境対応製品の開発、取り組み強化
一方で現行製品の機能性を維持しながらも環境対応製品の開発や取り組みには各社、積極的な姿勢を見せている。
とりわけ「モノマテリアル」は環境対応の有力候補の一つとなりそうだ。
ほかにも「生分解」「バイオマス」などへの動きが今後の中心となると予想される。
環境対応製品の要請は高まるものの、製造コスト増により敬遠されるケースも少なくない。
食品メーカーとしてはコスト、機能面は従来通りながらも、環境に配慮した包装資材で消費者にPRしたいという思い。
このコスト上昇分や加工賃の値上げを流通で認めない限り、道は険しいだろう。
現状、環境型包材の現実的な方向性としては、薄肉化やプラ使用量削減などが挙げられる。
鮮度保持フィルム包材
~食品ロスの低減に有効~
野菜など青果物の鮮度を保ち、食品ロスの低減に有効な「鮮度保持フィルム包材」で新たな提案が活発化している。
青果物の販売時にフィルム袋を使用することで、褐変などの変色が抑えられ、明らかに見た目の違いなどで”みずみずしさ”を保ち、販売期間を長くできるとして出荷数量を伸ばし、マーケットを構築してきた。
先行する大手企業がけん引する形で拡大してきたが、コスト競争力において優位性を発揮する製品も数多く出そろってきた。
今後は、機能面と共に売上増加など、実需に結び付く提案や、コストを含め、他社製品との違いを伝えることができた製品こそ、出荷量の拡大につながる”新商品”の開発提案が待たれている。
青果物は収穫後も呼吸が続いている。
フィルム包材を使って密封すれば袋内で酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、それが起因して品質劣化が進み、鮮度が低下することは周知の通り。
袋内の酸素、二酸化炭素濃度を最適な状態で気体をコントロールし、青果物の呼吸を最小限にして鮮度を長持ちさせるための包装技術としての地位を確立している。
この分野は防曇フィルムなどの包材も含め、野菜、青果物で数多くの製品が投入されている。
ここに来て業務用や輸出、個人消費など日本の農産物が国外で評価され付加価値も高くなっており、「食品ロス」などに焦点があたり農産物の鮮度を守り、おいしく食べるための包材として広く普及している。
店頭で購買意欲を高める新たな価値提案に包材企業は真価が問われている。
九州のある企業は、野菜や果実など印刷規格袋で黄色を除くカラーインキをメタリック調に、合わせてフィルム厚みを20%削減した薄膜タイプに順次変更し、環境配慮と購買意欲を高める製品展開に力を注いでいる。
「店内照明の明るさでも光が反射して”きらり”と販売棚から商品をアピールするはず」としている。
大阪の企業は紙とフィルムの複合製品の拡販に向け、青果物分野に特化した展開に引き合いが活発化している。
「包材の一部にフィルムを使用し高級感を伝えやすいとの評価が寄せられている。プラスチックの使用量削減に取り組む企業意識を訴求しやすい」との声もあり、今後ますます需要を伸ばすものと期待されている。
中部地区の企業は袋製品に記載するプラマークの印刷インキにバイオマスインキを採用した。
可能なことから環境への取り組みを進めていくとの企業姿勢をPR。
段ボールやコンテナの内袋として活用した場合のコストダウンを試算し提案する企業もある。
今年も新たな提案が注目されている。
PET単一など新提案
~バリア性、再生材使用~
温室効果ガスと言われるCO₂排出削減へ取り組みの実用化を合わせ、リサイクルの在り方の議論など、さらにラミネートフィルムの複合構成を単一な素材で同様機能を付加させたモノマテリアル包材の提案、採用が顕現してきた。
モノマテ包材の中にはバリア性を持つOPPフィルムベースのもの、表基材にPETフィルム、シーラント材にもPETフィルムを用いた提案が行われ、採用増加への機運が盛り上がり、今後の動向が注視されている。
ラミネート基材など、複数の素材で機能が付与されていたフィルムパッケージは、モノマテリアル化する上での課題は機能低下にあるとされている。
そこを独自開発技術で同等機能を保持し、酸素、水蒸気などに対する高いガスバリア性、遮光性を付与することに成功。
アルミ箔やアルミ蒸着した各種フィルムパッケージからの代替提案が具体化してきている。
さらに再生原料を用いた製品でも機能を落とさずに製品提案が行われるなど、今後の採用動向が注目されている。
大阪本社のPETシートのメーカーが再生原料使用率80%以上という高い水準でリサイクル原料を用い製膜した60㍃㍍厚無延伸A-PETフィルムをシーラント基材で使う包材の提案を本格化している。
スタンディングパウチとして製袋加工が可能で高透明性と自立性を実現している。
リサイクル原料率最大85%まで混入でき、延伸PETフィルムとのラミネート構成で「PET基材100%」のモノマテリアルパウチパッケージとして利用可能としている。
大手フィルムメーカーはOPPフィルムベースの製品が熱い視線を浴びている。
モノマテリアル、高いバリア性を持つとして炭素税など環境負荷抑制を目的に、ヨーロッパ企業からの引き合いが多いという。
今後は、植物由来包材との組み合わせなど、広い製品分野での開発が気になるところだ。
2022年1月1日包装タイムス引用